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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 185,353 characters · 371 screens
永禄九年十月九日。
宿命の日といおうか。
それより前に、森三左衛門の密々な取次があって、仔細は信長の耳に聞き届けられていた。
で、光秀の登城となり、彼と信長とが、岐阜城中で、初めて対面した日であった。
光秀は三十九歳。
信長は六ツ下の三十三であった。
次の間には、猪子兵助、森三左衛門、その他が詰めていて、光秀を、客として斡旋した。
「細川殿の手翰、ならびに将軍家の御書、篤、披見いたした。不肖信長を、恃みに思しめさるるからには、この信長に能うかぎりなお力にはなり申そう。――使者にも遠路大儀であった」
信長のことばに、
「微身、鴻毛の一命を賭し、天下のおん為めぞと、身に過ぎたるお使いに立ち、計らずも、ありがたき御承諾のおことばを賜わりまして、長途の艱苦も打ち忘れ、何やら身もうつつか夢かと疑われて、ただ欣し涙のみこぼれて参りまする」
と、光秀は平伏して答えた。
この時の彼の気もちに偽りはなかった。いや云い足りないくらいであった。その誠実なすがたに、信長は眼をそそいでいた。また、挙止進退、明晰なことばつき、床しげな才識。――語れば語るほど、見入れば見入るほど、