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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 185,353 characters · 371 screens

Aozora Bunko

「いえ。ないわけでは決してございませぬ」

「あると申すか」

「年々の御戦費、相つぐ敗戦の苦杯。この上にも、国財を濫費しては、戦いに勝っても、御内政に敗れましょうが」

「なんの、この期に」

「いや、御財政のみでなく、先には多くの人命を洲股に捨てさせております。これ以上、大事な兵を粗末に失うことは、賢明な策ではございますまい。――故に、藤吉郎が指揮する上は、敵の食を喰らい、敵地の資材をもって築き、御家人以外の人力を用いて、洲股の一城は築き上げたい所存なのでござりまする」

味方の兵力を費やさず、また、領土の資財を消耗せずに、目的を完成してみせる考えで――という藤吉郎のことばに、たいがいなことは呑み込む信長も、

(猿。正気か)

と、疑うような顔をした。

その顔いろを敏察して、

「お案じ遊ばされますな」

藤吉郎は先ずいって、その秘中の秘策を打ち明けるべく、信長へ人払いを願った。

「そち達も、遠く退いて、木の間木の間を見張っておれ」

信長は、小姓へ命じ、さて、主従二人きりとなって。

「藤吉郎。――敵地の資材をもって敵地に築くというのは、余にも分るが、味方の兵を用いず損なわずに戦わんとは、余にも解せぬことである。