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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 180,256 characters · 361 screens
その荷物の間に挟まって、嬰児は嬉々としていた。時々、米の粉の掻いたのや、練飴を舐ぶらせて行く。
船で泊り、旅籠に休み、幾夜を経てようやく、揚子江の畔の潯陽に出て来た。
見送り人もそれまで来る途中で、二人別れ、三人去り、ここの城内まで従いて来た者も、やがてみな帰った。
船宿で、五郎大夫主従は、幾日か船の便を待っていた。
すると金陵(南京)まで下江る船が今夜おそく、浦江の河口から出るという日の――まだ明るい頃だった。
船宿の手代が、薄い紙包を持って来て、
「旦那にお上げしてくれと、痩形の綺麗な女が、これを置いて、逃げるように行ってしまいましたが」
と、告げた。
容貌や年頃を糺すと、梨琴にちがいないのである。
怪しんで、包を開いてみると、それは五郎大夫が長年のあいだ、手に入れようとしても、どうしても手に入れることが出来なかった陶製の秘本だった。
この本を所持していた者は、窯場の職人頭をしている、依怙地者で、
「日本人には売らない」
といったり、途方もない多額な値を吹っかけたり、五郎大夫も遂に、断念するほかなかった物であった。
「どうしてそれを、梨琴が手に入れたろう?」