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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 180,256 characters · 361 screens
「それは」
と、指して訊ねた。
「見本の物か、出来た品か」
「新品にございますが」
「どれ、見せい」
「いえ、お目にかけるまでには、まだなかなか」
「いやいや。ちょうど、試し物があるのだ。――撃てぬことはあるまい」
「弾は飛びますが、関金の噛み合わせが、どうやっても、原品のようにつくれませぬ。もう一息、工夫いたせばと思っておりますが」
「試すのも、工夫の一つだ。よこせ、その鉄砲を」
小六が国吉の手からそれを取って、銃の腹を肱に乗せ、物を狙うような姿勢をしていた時である。
三度目の迎えが来た。
が、今度は、小者の取次ではなかった。ゆうべ御厨へ行って帰って来た稲田大炊助なのである。
「まだ、御用はおすみになりませぬか」
大炊の声に、小六は、鉄砲の台尻を肋骨に当てたままふり顧って、
「おお。稲田」
「お早くお越しねがいとう存じます。弁口をもって、天蔵殿を召し連れては参りましたが、妙な? ――と気どられたか、落着かないご挙動。悪くすると、檻を破る虎になるやも知れませぬ」
「よしッ、参ろう」
大炊助に鉄砲を持たせて、小六は、森の小道から書院の庭のほうへ、大股に歩いて行った。
成敗