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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 180,256 characters · 361 screens

Aozora Bunko

日吉はそこから、毎日、針売りに出て、帰りには塩物と米を買って帰って来た。木賃暮しは皆、自炊だった。竈だけを借りて、薪代と屋根代を払えばいいのである。

七日ほど過ぎた。

だが、七内からは、何にも云って来ない。七内も毎日、ぶらぶらしているのだろうか。彼は自分だけ捨てられたような気がしていた。

――と。或る日。

彼が屋敷町の小路を、針はいらんか、京針はいらんか――と商いして歩いていると、向うから、羽壺の革袋を脇に掛けて、二張三張の古弓を肩に担った男が、日吉よりはよく徹る声で、

「弓の直しイ。弓の直し――」

と、呼びながら歩いて来た。

そして近づいて来ると、オヤと眼をみはりながら、弓直しは立ち止って、

「あ。猿じゃねえか。何日、誰と此方へ来ていたんだ?」

と、訊ねた。

日吉も驚いた。

その「弓の直し屋」は、小六正勝の部下で、仁田彦十といい、ついこの間まで、蜂須賀村のひとつ邸にいた男なのである。

「彦十様。あなたこそ、どうしてそんな商売をして、この岐阜にいるんですか」

「おればかりじゃない。仲間の蜂須賀党が、少なくも三、四十人はもう入り込んでいる。――だが、猿まで来ているとは思わなかった」