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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 180,256 characters · 361 screens

Aozora Bunko

そして、客殿の前まで来ると、尾いて来た道空、丹後の二家老を、後に見、

「ここか」

「御意にござります」

「うむ」

頷いて、ずかと、廻廊の板面から、一段高い畳のうえに踏み上がると、落着き払って、設けの席に坐り、そのまま縁の中柱へ、ゆったりと背を凭せかけていた。

すこし、顔を上げ気味に。

格天井の絵でもながめているかのような風である。その眼のすずやかさ。眉目の優しさ。

室町の京公達でも、こう整った姿と面ざしは少なかろう。――しかし、それにばかり見恍れていた者は、天井を見ている彼のひとみの、不敵なものを見遁していた。

――と、その客殿の隅に、立てまわしてある屏風のうしろに、人の気はいがした。山城守入道道三は、その蔭から立って、信長の上座に、鷹揚に着席した。

「…………」

信長は、そ知らぬ風情をしていた。――というよりは、うつつに、扇を袴の前で弄びながら、そら嘯ぶいていたといったほうが近い。

「…………」

じろと、道三は、横に見た。

舅からものいう法はない。そう自己を持して黙っていたらしい。

一瞬、妙な空気になった。道三の眉に、険しい針が立った。――堪りかねた家老の堀田道空は、信長の側へすり寄って、頭を畳へすりつけながら、