Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 180,256 characters · 361 screens

Aozora Bunko

――戦場で片輪となった、この脚、この手は、二度と前の体に回すことはできないが、この子を通して、自分の血は百年先へも生かすことが出来ると信じるからである。

(……だが?)

と弥右衛門はまた、日吉を見ていると、情けない心地がした。

子を見ること親に如かず――というが、いかにひいき目に見ても、この見るからに奇異な顔した洟たらしの腕白が、親以上の者になって、親の名折れを雪いでくれようとは――考えても考えられなくなるからであった。

とはいえ、これは一粒だねだ。弥右衛門は懸けられない期待を、無理にも日吉に懸けているのだった。

「納屋の刀を、欲しいのか。――日吉」

「ううん……」

日吉は、首を振った。

「欲しくないのか」

「……欲しいことは、欲しいけど」

「なぜ正直にいわぬ」

「だって、おっ母が、いけないっていうんだもの」

「女は、刀嫌いだからな。よしよし、待っていろよ」

弥右衛門は、坐ったまま、ぐるりと後ろを向いた。そして壁の杖につかまり、ちんばを曳いて奥へはいって行った。

この家は、貧乏百姓に似ず、間数はたくさんあった。日吉の母の縁者が住んでいた家だからである。弥右衛門の方には、ほとんど身寄りがなかったが、母の方の親類にはまだどうにか暮している家が何軒かあった。