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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 180,256 characters · 361 screens

Aozora Bunko

と、辞儀ていねいに、後から名を云い添えた。

もの腰もやわらかい。郷士くさい武骨さもあるが、茶を一ぷくと望むので、妻女は、黄瀬戸の茶わんに、茶を立てて出した。

「作法はわきまえませぬ」

と、いうことは弁えたもので、天蔵は気らくに服みながらそこらを見まわし、

「さすがは、評判なお物持ち、結構なお道具ぞろいだ。失礼なれど、そのお水挿に用いておられるのは、世にいう、赤絵とやらではござらぬか」

「お目にとまりましたか。そのような物だそうでございまする」

「ふーむ」

と、感じ入った眼をそれにすえて、

「赤絵とあれば、堺の商人の手にでもかかれば、千金もいたすであろうに。……いや値などはとにかく、近頃、眼の保養をいたした」

などとなかなか腰を上げないでいたが、そのうちに、奥の支度ができましたから――という迎えに、

「どうぞ、あちらへ」

と、妻女は案内して、共に広間のほうへ出て来た。

ぐるりと何十人前の膳が、広間の襖や壁に沿って輪になって並んでいた。亭主役の茶わん屋捨次郎は、その真ん中に坐ってあいさつを述べ、妻女や女童の酌で酒がすむと、捨次郎はいつものように、

「では、てまえもお裾をいただいて――」