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にほんばし
日本橋
泉 鏡花
Read 日本橋 (にほんばし) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 88,697 characters · 177 screens
半年の間熟と目を塞いでいて、お茶屋の二階で目を開いて、ドキドキする胸を圧えるのがその仕儀なんだ。
一度も夢で泣いたのは……」
天井を高く仰いで云った、学士の瞳は水のごとし。
「どこか……私の寄宿舎の二階と向合う、同じ高さに川が一筋……川が一筋。……で、夢だろう。水はその下を江戸川の(どんどん)ぐらいな流れで通る。向う岸に二階がある。表だけ見えて、欄干が左右へ……真中に榎の大樹があって仕切る、その二階がね、一段低くなって流に臨んで、も一つ高い座敷が裏に有りそうなんだ、夢だからね、お聞き。……いや聞いておくれ。
その左右の欄干の、向って右へ、嫋娜と掛って、美しい片袖が見える。ト頬杖か何か、物思わしい風情で、熟とこっちを視めるらしい、手首が雪のように、ちらりと見えるのに、顔は榎に隠れたんだ。榎はどこか、深山の崖か、遠い駅路の出入境に有る、繁った大な年経る樹らしい。
そこへね、むくむくと動いて葉を分けて、ざわざわと枝を踏んで、樵夫が出て来た。花咲爺の画にあるような、ああ、」
と横を向いて卓子台を幽に拊って、
「前刻、西河岸で逢った植木屋……ね、ちょっと肖ていたよ。