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うんせききこう
柳宗悦 民藝紀行
柳 宗悦
Read 柳宗悦 民藝紀行 (うんせききこう) by 柳 宗悦 (やなぎむねよし) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 133,050 characters · 276 screens
石見の焼物
見放された人間のように、居所もろくにないのである。窯は小野村喜阿弥だといわれる。益田から西方一と駅である。そこで鉄釉の碗やら壺やら土瓶やらが出来る。まだマンガンやらクロームに犯されていないから、釉がほんものである。黒ければ漆のように、赤ければ亀甲のように光る。のり入れだという小壺は形が卵のようで、蓋が美しい、焼け具合で耀変が来ると、例の大名物油屋の肩附を想わせる。今時利休でもいたら、早速中から名器を択び出すだろう。土瓶は近来どこの窯でも堕落し切ってしまったが喜阿弥の飴薬土瓶は昔のままである。卓上で紅茶の土瓶にでも使ったら誰だって見直すだろう。
汁茶碗は十個一くくり二十五銭で買える。勿体ない感じを受ける、東京の数寄者なら一個二十五銭でも悦んで買うだろう。私はこれらのものがあるがために二度益田に足を運んだ。だがどの益田の人が、こんな悦びを受けてくれるか。名もない喜阿弥の陶工のために、これらの短い言葉が役立つことを望む。
石見の焼物
津和野に入ると石見に入ったという想いがする。なぜなら緑の山や森の背景に赤瓦が急に輝き出すからである。それは自然をかえ建築をかえる。