Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Read 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 148,519 characters · 296 screens

Aozora Bunko

去年は鹿を見なかったか達弥、と甲斐が訊いた。私は知りません。話しも聞かなかったか。私は聞きませんでしたと達弥は答えた。

「鹿は阿武隈川の向うから、小坂の瀬を渡って来る」と甲斐は云った、「このまえ、明暦二年だったか、二十二貫もあるのを射とめたが、あれも小坂の瀬を渡って、正覚寺(山)へはいるところでやったのだ」

「あの角はみごとでございました」

「みごとだった」

「あんなみごとな角は珍らしゅうございます」と舎人が云った。

丹三郎は黙って聞いていて、ふと「私もそんな狩のお供がしてみとうございます」と云った。だめだ、と舎人が云った。狩はいつもお一人でなさる、供のできるのは与五兵衛だけだ、と云った。しかし私はまだ船岡を知りません、せめてお国へお供だけでもしとうございます、と丹三郎が云った、「いつか伴れてゆこう」と甲斐は頷いた。

「今年お供ができないでしょうか」

「今年はだめだ、おまえは良源院にいる姉弟をみてやらなければならぬ」

丹三郎は眼を伏せた。それで思いだしたように、甲斐は虎之助のようすを訊いた。丹三郎は、まだはっきりしないようだ、と答えた。寝ているのか。いや、寝たっきりではありませんが、まだ床上げを致しません。