Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Read 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 148,519 characters · 296 screens
菊
主賓は伊達安芸、つぎに現職の家老、奥山大学、大条兵庫、古内主膳。また「一家」の格式である片倉小十郎。ほかに原田甲斐、富塚内蔵允、遠藤又七郎、この三人は「着座」といって宿老であった。
酒は定刻よりも早くはじまったらしい。
甲斐はわずかに遅刻しただけであるが、座はもう賑やかになり、奥山大学はもう酔って、高い声でなにかきえんをあげていた。
甲斐は古内主膳に挨拶した。主膳重安は五十二歳で、すでに老境にはいった人のように、痩せた蒼白い顔だちの、声の低い、柔和な男であった。彼の亡父、主膳重広は、故忠宗に殉死した人である。こんど彼は忠宗の法事のため、高野山に使いし、三日まえに帰ってきたものであった。
挨拶が済むと、主膳が声をひそめて云った。
「どうやら無事におさまったようで、さぞ安堵なすったことでしょう」
甲斐はあいまいに微笑した。
「周防どのにあらましのことを聞きました」と主膳は云った、「久世侯の話しも聞きました、周防どのは、これで伊達家も壊滅かと、覚悟をきめたと申しておられました」
「周防どのはみごとでした」と甲斐が云った、「酒井侯に向かって、亀千代さまに家督がゆるされないなら、いっそ六十万石をとりつぶしてもらいたい、と申された、あの一言がお家を救ったのです」