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いきふどう
橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇
橘 外男
Read 橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇 (いきふどう) by 橘 外男 (たちばなそとお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 198,400 characters · 387 screens
ています。田舎の寺ですから、どうせ藁か萱葺き屋根の、大きかったか小さかったかそこまでは記憶もありませんが、ただ苔の生えた高い石段を登ったところに、太い柱の山門が聳え立って、両側には朱も碧も剥げ落ちた木地まる出しの、大きな仁王様が眼を怒らせて突っ立っていたことを、覚えているのです。
本堂は昔焼けて、ただこの山門だけが二、三百年も前から、残っているのだとか聞いていましたが、あの遠さでは一日がかりでなければ、お墓詣りにも行くことはできますまい。では、ともかく着任の挨拶をしてから、役所の都合を見てまたゆっくり、出かけて来ることにしよう、その時連れてって欲しいと、兄に頼みました。
「亮三郎も、えろう嘆いての、一人の親だのに、夫婦揃って遠くへ来てるばっけえに、親の死目にも、逢うことがでけんというて来ただが、わしが付いとるから、余計な心配は、するに及ばんというてやったんじゃ」
亮三郎というのは、九大医学部の助教授をしている弟です。結核薬物研究のため、今ハーヴァード大学へ派遣されています。子供のない気楽さから、弟の妻も手芸の研究で、夫婦揃って亜米利加へ行っているのです。