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いきふどう
橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇
橘 外男
Read 橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇 (いきふどう) by 橘 外男 (たちばなそとお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 198,400 characters · 387 screens
小金吾の亡霊
さっきさんざん老母に愚痴をいわれていた猫の玉でしたが、おそらくそれに気がついていたものは、ただのひとりもなかったであろうと思われます。真っ暗な夜は深々とふけわたって、雨はショボショボとふり、風さえくわわって森の梢は、ごうごうと音だてていました。
しかも、塀の外へおり立ってランランたる目をして、キッと闇のなかをうかがいながらブルブルッと二、三度、身ぶるいするやいなや、玉はたちまち、見るもすさまじい大怪猫のすがたとかわってしまいました。そしていつのまにあつまったのか、うしろは五、六匹眷属郎党をしたがえて、何かさしずしているようすは、これがついさっきまで老母のまえに、頭をたれてチョコナンとすわっていたあの飼猫の玉かと、うたがわれんばかりのおそろしい形相だったのです。
小金吾の亡霊
もちろん老母は深いうれいにしずんでいますし、召使たちはその老母をなぐさめるのにことばもなく、胸を痛めておりますから、だれだってこの二、三日猫の玉がすがたを見せないのに気のつこうはずもありません。
が、それから三日ばかりもたったころでしょうか。老母の枕もとへ、またソーッとはいってきたのは、その玉だったのです。