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うたよみにあたうるしょ
歌よみに与ふる書
正岡 子規
Read 歌よみに与ふる書 (うたよみにあたうるしょ) by 正岡 子規 (まさおかしき) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 17,419 characters · 35 screens
六たび歌よみに与ふる書
「花の匂」などいうも大方は嘘なり、桜などには格別の匂は無之、「梅の匂」でも『古今』以後の歌よみの詠むように匂い不申候。
春の夜の闇はあやなし梅の花
色こそ見えね香やは隠るる
「梅闇に匂ふ」とこれだけで済むことを三十一文字に引きのばしたる御苦労加減は恐れ入ったものなれど、これもこの頃には珍らしきものとして許すべく候わんに、あわれ歌人よ「闇に梅匂ふ」の趣向はもはや打どめに被成てはいかがや。闇の梅に限らず普通の梅の香も『古今集』だけにて十余りもあり、それより今日までの代々の歌よみがよみし梅の香はおびただしく数えられもせぬほどなるに、これも善い加減に打ちとめて香水香料に御用い被成候は格別そのほか歌には一切これを入れぬこととし、鼻つまりの歌人と嘲らるるほどに御遠ざけ被成てはいかがや。小さきことを大きくいう嘘が和歌腐敗の一大原因と相見え申候。〔『日本』明治三十一年二月二十三日〕
六たび歌よみに与ふる書
御書面を見るに愚意を誤解被致候。ことに変なるは御書面中四、五行の間に撞著有之候。初に「客観的景色に重きを措きて詠むべし」とあり、次に「客観的にのみ詠むべきものとも思われず」