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うたよみにあたうるしょ
歌よみに与ふる書
正岡 子規
Read 歌よみに与ふる書 (うたよみにあたうるしょ) by 正岡 子規 (まさおかしき) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 17,419 characters · 35 screens
さほどに古調は擬しがたきにやと疑い居り候ところ、近来生らの相知れる人の中に歌よみにはあらでかえって古調を巧に模する人少からぬことを知り申候。これによりて観れば、昔の歌よみの歌は今の歌よみならぬ人の歌よりも遥に劣り候やらんと心細く相成申候。さて今の歌よみの歌は昔の歌よみの歌よりも更に劣り候わんにはいかが申すべき。
長歌のみはやや短歌と異なり申候。『古今集』の長歌などは箸にも棒にもかからず候えども、かような長歌は『古今集』時代にも後世にもあまり流行らざりしこそもっけの幸と存ぜられ候なれ。されば後世にても長歌を詠む者にはただちに『万葉』を師とする者多く、従ってかなりの作を見受け申候。今日とても長歌を好んで作る者は短歌に比すれば多少手際善く出来申候。(御歌会派の気まぐれに作る長歌などは端唄にも劣り申候)しかしある人は難じて長歌が『万葉』の模型を離るるあたわざるを笑い申候。それももっともには候えども、歌よみにそんなむつかしいことを注文致し候わば『古今』以後ほとんど新しい歌がないと申さねば相成間敷候。なおいろいろ申し残したることは後鴻に譲り申候。不具。〔『日本』