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せんこうてい「ハビヒツブルグ」
潜航艇「鷹の城」
小栗 虫太郎
Read 潜航艇「鷹の城」 (せんこうてい「ハビヒツブルグ」) by 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 132,395 characters · 263 screens
その返電に、晩香波碇泊艦隊から、急派の旨を答えてきたが、しかし、時はすでに遅かった。
ヴィデも、長濤に阻まれて、照尺を決めることが出来ない。なにしろ、相手は一点の灯、こちらは、闇にうっすらと浮く巨館のような船体である。それが、悔んでも及ばぬところの室戸丸の不幸であった。
煙筒は、真黒な煤煙に混じえて、火焔を吐き出しはじめた。船体が、ビリビリ震動して、闇に迫る怪艇の眼から遁れようとした。
高速力で、旋廻を試みながら、絶えず、花火のような火箭を打ち上げていた。しかし、波間の灯は、室戸丸から執拗に離れなかったのである。やがて、警砲が放たれ、右舷に近く水煙があがった。
「だめです、船長。なまじいたら、僕らは復讐されますぜ。発砲はやめます。敵艇の砲手の腕前は、驚くべきものですよ。断じて、盲目弾ではない。最初の警砲は、本船の右舷近くに落ちたでしょう。それから、旋廻したにもかかわらず、二の弾は、船首の突梁に命中したのです。船長、本船は翻弄されているんです」
そう云って、ヴィデの蒼白な顔が、砲栓から離れようとしたとき、三の弾が、今度は船尾旗桿に囂然と命中した。
「よろしい、抵抗を中止して、君の意見に従おう」