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せんこうてい「ハビヒツブルグ」
潜航艇「鷹の城」
小栗 虫太郎
Read 潜航艇「鷹の城」 (せんこうてい「ハビヒツブルグ」) by 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 132,395 characters · 263 screens
しかし前方の観覧室には、とうていこの世ならぬ異様な光が漲っていた。
それは、蒼味を帯びた透明な深さであるが、水面に蜒りが立つと、たぶんさまざまな屈折が影響するのであろうか、その光明には奇異な変化が起ってゆくのだった。
一度は金色の飛沫が、室いっぱいに飛び散ったかと思うと、次の瞬間、それが濃緑の深みに落ち、その中に蜒りの影が陽炎のようにのたくって、その燦びやかさ美しさといったら、まず何にたとえようもないのである。
けれども、その――三稜鏡の函に入ったような光明の乱舞が、四人の盲人には、いっこう感知できないのも道理であるが、いつかの日艇長と死生を共にしたこの室の想い出は、塗料の匂いその他になにかと繰り出されて、それにシュテッヘ大尉の事件を耳にした今となっては、あの不思議な力の蠢動がしみじみと感ぜられ、はては襲いかかってくる恐怖を、どう制しようもなかったのであった。
そして、それがつのりきった結果であろうか、四人の集めた額が離れると、八住は手さぐりに入口の壁際に行って、そこにある食器棚から、一つの鍵を取り出してきた。
まもなく、その鍵は二つの扉に当てがわれたが、すむと再び旧の場所に戻して、八住は発艇の合図をした。