Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

はなかみろうにん

濞かみ浪人

吉川 英治

Read 濞かみ浪人 (はなかみろうにん) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 19,425 characters · 39 screens

Aozora Bunko

その釜の湯のたぎる頃――内匠頭の庭下駄の音がそこへ近づいて来る。

『奥方、何であろうの』

『最前から噪がしい声がいたしまする』

『長屋じゃの、若侍どもが、何か争いを初めたか。……宿直は誰じゃ』

『源吾でございました』

『茶は、後にしよう』

佩刀を持った小姓は、彼の早い足の後から小走りに従いて行った。

内匠頭は、書院の縁に立った。

『源吾、源吾』

『はっ』

ゆうべの宿直、大高源吾は、縁端に手をつかえて、内匠頭の眉を見上げながら、

『お耳にさわりましたか……』

と恐懼した。

『誰じゃ、あの喚きは』

『小山田一閑父子でござりまする』

『喧嘩じゃの、隠居が、何しに又、伜と共に、あのように立腹いたしているのか』

『……はっ』

『相手は誰』

『不破数右衛門でござります』

『ウム、あれか――』

と、内匠頭は、苦笑を閉じるように唇をむすんで、

『数右衛門ではめずらしくない事だ。……源吾。そちにも、云い含めておいたはずではないか。ちと、あの粗暴を撓め直すようにせいと』

『御意もござりました故、一二度、俳諧の席などへも誘いましたが、いっこう風雅などは、心にもそまぬ様子……。それに、数右衛門の数右衛門たるところは、やはり野育ちの素白な性質――あの浪人骨のぶとい所にあるやに存ぜられますので、実は、其後は抛って置きましたわけで』