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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
Read 猫の蚤とり武士 (ねこののみとりぶし) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 185,496 characters · 368 screens
「五十嵐様のその後のご様子、これはお解りでござりましたか?」
ややあって菊女は小声で訊いた。
入谷田圃でのあの夜の出来事を、あの夜兵庫はこの家へ帰るや、菊女へ細かく物語った。爾来菊女は同志の一人として、紀州藩士に捕えられた右内を――五十嵐右内の身の上を、絶えず案じているのであった。
「これとてハッキリとは解りませぬが、近々に紀州へひそかに護送し、彼の地で捕えた他の同志と共々、斬殺するとか申すことで……」
切歯せんばかりに兵庫は云った。
「怨めしきは紀伊殿でござる」
兵庫は無念そうに云い続けた。
「兄正雪義挙の際にも、一旦加担を約しながら、中頃に至って違約され、今回も加担し置きながら、この頃に至って違約したばかりか、紀州の同志を捕縛して、無残にも斬殺されようとなさる。……何が英傑の南龍公じゃ! 臆病者の頼宣卿に過ぎぬわ!」
文机から躰を前へのり出し、眼の前に紀州公がいるかのように、罵るように兵庫は云った。
「この怨みあくまで晴らさでは置かぬ、――五十嵐氏は申すに及ばず、捕えられた紀州の同志たちは、どうあろうと助けずば置かぬ! ……ことに五十嵐右内殿は、軍用の金の保管方を、ご依頼いたせし重要人物! 今回紀州より江戸へ出られたも、一つはその金の保管の場所を、拙者に告げようためだった筈じゃ……あの人物を抑えられては、経済