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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
Read 猫の蚤とり武士 (ねこののみとりぶし) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 185,496 characters · 368 screens
これは鵜の丸兵庫であった。
「感謝!」
と一句! 五十嵐右内は、翻然として飛び出した。
「ならぬ!」
と駈けへだてた紀州藩士!
ガッ!
その一人の刀を奪い、右内は一刀に斬って捨て一文字に走って来た。
「引け!」
と兵庫の大音声!
「それ!」
とばかりに義党の面々は、右内を真ん中に引っ包み、嵐のように走り出した。
「逃がしては一大事! それ方々追いつめて!」
「捕らえろ!」
「ならずば斬り捨てろ!」
紀州藩士は後を追った。
追い詰められたと見てとるや、
「やれ!」
と兵庫の凄い声!
グルリ!
瞬間!
振りかえり!
義党の面々は逆襲的に、紀州藩士の群へ斬り込んだ。
バタバタと斬られて仆れる奴!
背景は火事だ!
叫喚、悲鳴!
火の粉の雨! 火龍のような焔!
ド、ド、ド、ド、ド――ッと逃げる藩士!
「ソレ引け!」
とまたも兵庫の声!
が、懲りずまにまた追う藩士!
引っ返しては逆襲し、機を見て引く義党の面々! 進退駈け引き神妙無類!
だいたい同じ時刻であった。
桔梗屋の座敷では民弥と梶子とが、人形を入れた例の箱を、さすがに二人の間に置き、間をへだてて寝についていた。
二人とも眠ってはいなかった。