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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
Read 猫の蚤とり武士 (ねこののみとりぶし) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 185,496 characters · 368 screens
――と、この時咳の声がし、
「水野大炊にござりますが……」
と、錆びた声が隣室から聞こえて来た。
「大炊頭殿で、さあさあずっと」
と、姉小路卿は気軽に云った。
紀伊家の重臣水野大炊頭は、もうかなりの老年で、鬢の毛など白かった。
部屋へはいるとつつましく坐り、
「これはこれは梶子殿にも」
こう云って如才なく会釈をし、
「ご殿でのお住居いかがでござりまするな?」
「まことに結構、極楽のようで」
と、まず姉小路卿が道化た調子で云った。
すると梶子も負けていない口調で、
「ノビノビとしておりまして、天国のようにござります」
と云った。
「でも」
と梶子は云いついだ。
「時々自由にご殿の外、お城下見物が出来ましたら、申しぶんのう存ぜられます」
「その儀でござるよ」
と大炊頭は云った。
「もう今夜よりお二人様には、自由にどこへなりとお運びくだされましても、よろしいようになりましたので」
「ははあそれは何より重畳」
と姉小路卿は嬉しそうに云った。
「随分蟄居させられましたからのう」
「お気の毒に存じまする」
「ご馳走ぜめにされたのじゃから、不平を云うことも出来ぬがのう」
姉小路卿は微笑しいしい、