Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

Read 猫の蚤とり武士 (ねこののみとりぶし) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 185,496 characters · 368 screens

Aozora Bunko

こう伊豆守はやがて云った。

「ははあさようでございますかな」

「さあ今から二十年前……まだ私が四十歳ぐらいの頃に、京都へ参って一月あまり、滞在致したことがございましたが……」

「…………」

「鷹司卿には一方ならぬ好意を、その際お寄せくださいましてな、再々お館へもお召しくだされ、家族的におつきあいくだされましたよ」

「ははあさようでございましたか」

姉小路卿はこう云ったが、

(今より二十年前の昔といえば、まだ加判にも列していず、至極身分の軽い時代だった筈だ。……ははあそんな頃に京都へ来て、鷹司卿あたりに歓迎されたら、終生好意は忘れられないであろうよ)

と、こんなことがふと思われた。

また伊豆守は沈黙した。

それは大変おだやかな、そうして何んとなく懐古的な、なつかしさを持った沈黙であった。

「その頃鷹司卿には二十歳ぐらいの、簾子様と仰せられたお妹ご様を、お持ちの筈でございましたが……」

ややあってから伊豆守は云った。

どういう訳かそう云った時に、この有名な老宰相の眼もとに、漠とした紅味が一瞬間潮し、眼が熱をもって輝いた。

まるで青年に返ったようであった。

(はてな?)