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しゅくず
現代日本文学館8 徳田秋声
徳田 秋声
Read 現代日本文学館8 徳田秋声 (しゅくず) by 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 327,364 characters · 638 screens
鼻の下の詰まったところにも意気味があった。
銀子はもとちょっと居た人形町の家へも行きづらく、その土地で人に顔を見られるのもいやで、今度はあらためて河岸をかえ、体が楽だという触れ込みのある千葉の蓮池から出ることにしたのであった。
蓮池の埋立てだという蓮池の花街は、駅から二丁ばかり行った通りにあった。その辺には洋食屋やカフエ、映画館などもあり、殷賑地帯で、芸者の数も今銀子のいる東京のこの土地と乙甲で、旅館料理屋兼業の大きい出先に、料亭も幾つかあった。
銀子の出たのは、藤本という、土地では看板の古い家で、通りから少し入り込んだ路次の一軒建てであったが、下の広々した玄関の上がり口の奥に、十畳の部屋があり、簿記台や長火鉢、電話も廊下につけてあり、玄関脇の六畳と次ぎの八畳とで、方形を成した二階屋であったが、庭づたいに行ける離れの一棟も二階建てであった。周囲は垣根で仕切られ、庭もゆっくり取ってあった。のんびりした家の気分が目見えに行った途端、すっかり銀子の気に入ってしまったのだったが、主人の方でもいくらか、他の抱え並みには見なかった。
主人は夫婦とも北海道産まれで、病気で奥の八畳に寝ている主婦の方が、五つ六つも年嵩の、四十六七にもなったらしく、髪も六分通りは白く、顔もうじゃじゃけていたけれど、笑い顔に優しみがにじみ、