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しゅくず
現代日本文学館8 徳田秋声
徳田 秋声
Read 現代日本文学館8 徳田秋声 (しゅくず) by 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 327,364 characters · 638 screens
七
」
均平は匂わした。
「どこですの。」
「ホテルだ。」
「ホテルに誰方か……。」
加世子は小声で言ったが、気がついたらしく口をとじた。
「何なら紹介しよう。」
「ええ。」
食事がすんで療養所へ行ったのはもう九時であった。療養所はこの狭い高原地の、もっとも高燥な場所を占めていたが、考えていたよりも建築も儼としており、明るい環境も荒い感じのうちに、厳粛の気を湛えており、気分のよさに、均平もしばらく立ち止まって四辺を見廻していた。
均一は鈴蘭病棟の一室にいたが、熱も大して無いと見えて、仰臥したまま文庫本を見ていた。木造だけに部屋の感じもよく、今一人の同じ年頃の患者とベッドを並べているので、寂しそうにもなかった。
「お父さま来て下さったの。」
加世子が傍へ寄って胸を圧されるように言うと、均一は少し狼狽したように、本を枕頭におき、入口にいる均平を見た。
「どうだね、こちらへ来て。」
均平は目を潤ませたが、均一も目に涙をためていた。
「今のところ別に……。」
七
「何しろこの病院は素晴らしいね。ここにいれば大抵の患者は健康になるに決まっているよ。」
「ここまで持って来れる患者でしたら、大抵肥って帰るそうです。