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しゅくず
現代日本文学館8 徳田秋声
徳田 秋声
Read 現代日本文学館8 徳田秋声 (しゅくず) by 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 327,364 characters · 638 screens
古風な小紋の絽縮緬の単衣を来た、彼女のちんまりした形が、目に懐かしく沁みこんだ。
葉子は果して慈父に取り縋るような、しおしおした目をして、しばらく庸三を見詰めていた。
「先生、若いわ。」
まだ十分恢復もしていないとみえて、蚕のような蒼白い顔にぼうッと病的な血色が差して、目も潤んでいた。庸三は素気ないふうもしかねていたが、葉子は四辻の広場の方を振り返って、
「私、女の子供たちだけ二人連れて来ましたの。それに女中も一人お母さんが附けてくれましたわ。さっそく家を探さなきゃなりませんわ。」
そう言って自動車の方へ引き返して行くと、その時車から出て来た幼い人たちと、トランクを提げた女中とが、そこに立ち停まっている葉子の傍へ寄って来た。
「さあ、おじさんにお辞儀なさい。」
子供たちはぴょこんとお辞儀して、にこにこしていたが、この子供たちを纏めて来て、新らしい生活を初めようとする母親の苦労も容易ではなかった。それも物事をさほど億劫に考えない、夢の多い葉子の描き出した一つの芸術的生活構図にすぎなかった。
庸三が三十年も住み古しの狭い横町と並行した次ぎの横町に、すぐ家が見つかって、庸三の裏の家に片着けてあった彼女の荷物――二人で一緒に池の畔で買って来たあの箪笥と鏡台、それに扉のガラスに桃色の裂を縮らした本箱や行李、萌黄の唐草模様