Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

しゅくず

現代日本文学館8 徳田秋声

徳田 秋声

Read 現代日本文学館8 徳田秋声 (しゅくず) by 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 327,364 characters · 638 screens

Aozora Bunko

撞球室の入口のドアの上部の磨硝子に明りがさして、球の音も微かに洩れて来た。庸三はどこかそこいらにかの青年の幻がいるような気もしたが、葉子が逗子に行かない前から彼の予感にあったあの恋愛も、現実面へ持ち来たらせられてみると、ひとたまりもなく砕けてしまったのであった。庸三がその結婚の実を結ぶことを希ったのは嘘ではなかったが、巧く行きそうもないことを望んだのも真実であった。

二人はやがて食堂にいた。

「君はマルクス勉強するつもりだったの。」

庸三は葡萄酒のコップを手にしながら、揶揄い面で訊いてみた。

「私がお嬢さんすぎると言うんでしょう。あの人だって坊っちゃんよ。」

プロレタリヤ運動もまた目に立つほど興っていない時分のことで、庸三はマルクスの学説のどんなものだかも知らなかったが、そういった時代の一つの雰囲気には胸を衝かれた。かつて草葉が画をかいてやると言って、葉子から白地の錦紗の反物を取り放しにしているということから、あの人たちにはすでにそういった、有る処から取ってやるのが当然だという、生活の必要から割り出された太て腐れの感情があるのだと、葉子は話して、

「草葉さんはいつ約束の金をくれるんだと言って、よく催促したものよ。