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しゅくず
現代日本文学館8 徳田秋声
徳田 秋声
Read 現代日本文学館8 徳田秋声 (しゅくず) by 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 327,364 characters · 638 screens
多分立ち際の買いものだと思われた。
「御免なさい。お金いただいて。でも、そんなに手が着いていないわよ。一緒に旅行しましょう。」
葉子は尻あがりに言った。あれだけあってもどうせ何ができるものでもないから、一緒に綺麗に使おうといったふうだった。
「それよりか面白いことがあったのよ。汽車の中で女学校時代のお友達に逢ったの。市の大きな呉服屋の娘さんですけど、銀行なんか持っている多額納税者の小河内さんとこへ片着いて、市でも評判なのよ。その小河内さんも一緒だったものだから紹介されたけれど、この人は三田の経済部出で麹町辺に家をもっているらしいの。一度遊びに来いとか言っていたっけが、洋服でもネクタイでも靴でも、それこそ五分の隙もないシックな気取り方で、顔もきりっとした、あれが苦味走ったとでもいうんでしょうよ、ちょっと現代風のいい男なの。ああいう人はまたいい葉巻を吸ってるものなのね。ケイスを出して、私にも一本くれたけれど――。」
葉子の話のなかに、そこに通俗小説の主人公が一人浮かび出して来た。
「奥さんも、顔は少々二の町だけれど、派手な訪問着なんか着て、この人はただ人柄がいいというだけのものなの。