Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しろばなのあさがお
白花の朝顔
泉 鏡花
Read 白花の朝顔 (しろばなのあさがお) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 30,880 characters · 62 screens
雑魚寝の女護の島で、宿酔の海豹が恍惚と薄目を開けると、友染を着た鴎のような舞子が二三羽ひらひらと舞込んで、眉を撫でる、鼻を掴む、花簪で頭髪を掻く、と、ふわりと胸へ乗って、掻巻の天鵞絨の襟へ、笹色の唇を持って行くのがある。……いいえ、その路之助のですよ。女形の。……しかも同じ衾の左右には、まくれたり、はだかったり、白い肌が濡れた羽衣に包まれたようになって、紅の閨の寝息が、すやすやと、春風の小枕に小波を寄せている。私はただ屏風の巌に、一介の栄螺のごとく、孤影煢然として独り蓋を堅くしていた。とにかくです、昼夜とも、その連中に、いまだかつて、顔を見せなかったのが、お絹なんです。
――晩には、東京へ帰ろうとする朝でした。旅馴れないので、何となく心が急きます。早めに起きた右の栄螺が、そっと蓋をあけて、恐る恐る朝日に映る寝乱れた浮世絵を覗きながら、二階を下りて、廊下を用たしに行く途中、一段高く、下へ水は流れませんが、植込の冷い中に、さらさらと筧の音がして、橋づくりに渡りを架けた処があった。
そこに、女中……いや、中でも容色よしの仲居にも、ついぞ見掛けたことのないのが、むぞうさな束髪で、襟脚がくっきり白い。