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ふくおうじでん
福翁自伝
福沢 諭吉
Read 福翁自伝 (ふくおうじでん) by 福沢 諭吉 (ふくざわゆきち) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 209,912 characters · 402 screens
何でも人間の行くべき処は江戸に限る、是れから真直に江戸に行きましょうと決心はしたが、この事に就ては誰かに話して相談をせねばならぬ。所が江戸から来た岡部同直と云う蘭学書生がある。是れは医者の子で至極面白い慥かな人物と見込んだから、この男に委細の内情を打明けて、「斯う/\云う次第で僕は長崎に居られぬ、余り癪に障るからこのまゝ江戸に飛出す積りだが、実は江戸に知る人はなし、方角が分らぬ。君の家は江戸ではないか、大人は開業医と開いたが、君の家に食客に置て呉れる事は出来まいか。僕は医者でないが丸薬を丸める位の事は屹と出来るから、何卒世話をして貰いたいと云うと、岡部も私の身の有様を気の毒に思うたか、私と一緒になって腹を立てゝ容易く私の云う事を請合い、「ソレは出来よう、何でも江戸に行け。僕の親仁は日本橋檜物町に開業して居るから、手紙を書いて遣ろうと云て、親仁名当の一封を呉れたから私は喜んで之を請取り、「ソコデ今この事が知れると大変だ、中津に帰らなければならぬようになるから、是ればかりは奥平にも山本にも一切誰にも云わずに、君一人で呑込んで居て外に洩らさぬようにして、僕は是れから下ノ関に出て船に乗て先ず大阪に行く、凡そ十日か十五日も掛れば着くだろう。