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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Read 私本太平記(五) (しほんたいへいき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 252,330 characters · 505 screens
……で、俊連も加勢に上陸り、まいど歯がみを噛んでおりますわけで」
「七郎」
「はっ」
「こよい、深夜の干潮は、正しくは何刻ごろに相なるな?」
「このところ、夜々、月の出は亥の刻(午後十時)過ぎ、従って、潮の干ざかりは、四更の丑満さがりとなりましょうか」
「すると? ……」
義貞は何か考えこんだ。
或る確信をえたらしい。
「潮は今だ、潮時もいい」
と、義貞はいった。
すぐ彼は、帷幕の面々を、よび集めた。
もうここでは床几なぞは使っていない。帷幕といっても、行合川のほとりの草原に、各※(二の字点、1-2-22)、あぐらをくんだままのものだ。
鳩首して、やがての後、
「よろしいか」
義貞は、念をおした。
諸将、ことばもなかった。しかしことば以上なもので深く頭を下げた。
岩松経家と吉致の兄弟は、すぐ九隻の船手の指揮者として、船馴れた一隊をつれて腰越の磯へいそいだ。
また、三木俊連は、陣借の身分なので、同族の行俊、貞俊ら以下、手飼いの郎党小者ばかり二百余人の小勢で、かねて調べておいた“田鍋谷”へ分け入って行った。
道もない道を迂回路として行くのであったから、三木部隊はみな徒歩だった。