Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

しほんたいへいき

私本太平記

吉川 英治

Read 私本太平記 (しほんたいへいき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 126,598 characters · 254 screens

Aozora Bunko

なお、このさい、卯木には髪をおろさせ、出家しました――と申しあぐれば、女院へのお詫び出でも、一そう誠意を示すものになるであろう。

次に、男の処置だが。

男の服部治郎左衛門元成の身は、生木を裂くような非情には似るが、これは、いちど元型に返して、旧主の烏丸家へ、差し送るのが当然。

そのうえ烏丸家で、いかなる御処置をとるかは、二の事だが、楠木家として、当今、声望のたかい烏丸成輔卿と、わだかまりを持つなどは以てのほかだ――と。

「……だが」

正成は、悩んだ。

「あわれな妹、そんな処置にはしたくない」

――その晩、彼は蚊帳のうちに横たわっても、何となく眠れなかった。

爺の左近と、龍泉の正季も、彼のさしずを待ちかねるふうだが、それに黙したまま、寝床まで抱き入れた迷いは、寝ぐるしい蒸し暑さを、よけい幾たびもの寝がえりにさせていた。

すると、夜半ぢかくだ。

ずしん……と屋の棟の一震につづいてゴロゴロゴロ……と遠雷の響きが聞かれた。

「ア、かみなりか?」

正成はすぐ雨を思った。

思わず、坐り直した。雷鳴は、唖の金剛山が物を言い出したように轟き鳴ッている。――いまここで、一ト雨来れば、枯色の田の半分以上は救われるぞ――と考え来たって、正成の頬を、白い涙のすじが垂れた。