Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
Read 私本太平記 (しほんたいへいき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 126,598 characters · 254 screens
それまでは、日夜、警固をおこたるな」
ところが――。
その船木頼春が、たった今、仮牢としておいた庫裡の内で、舌をかみ切って自殺したと知らせて来たので、本庄鬼六は、仰天して、すぐそこへ飛んで行った。
……が、すでに、こときれていたのである。鬼六は、唯一の生き証拠を失ったとして、警固の兵に当りちらし、地だんだを踏みつつもとの方へ戻って来た。
そして、ふと。
さっき、自分がいた堂の濡れ縁の前に、一枚の莚を見た。――莚の上には、水藻のような黒髪をさっと束ねて、朝の光にも耐えぬかのごとく俯っ伏していた、うら若い女房が見えた。
「……そうだ、今は、日野俊基の行方を知る生き証人は、この女と、女の良人としかいないのだ。大事に生かしておいて、責めねばならぬ」
鬼六は、黒髪を見すえながら、もとの座へ腰をおろした。
「……女」
「はい」
「名は」
「卯木と申しまする」
「何歳に相なる」
「…………」
本庄鬼六もつい見惚れた。
が。われに返ると、とつぜん、六波羅検断所の白洲で猛ぶような地声に変った。
「幾ツだと訊いておるのになぜ答えん。何事も素直にいわぬと、仮借せぬぞ。痛い目には、あいたくあるまい」