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らしんのにょせん
裸身の女仙
野村 胡堂
Read 裸身の女仙 (らしんのにょせん) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 14,437 characters · 29 screens
「これは、御新造様の絵姿じゃ御座いませんか、何うしてこんなところに――」
お石はあまりの事に眼を丸くして、釘付けになって了いました。油絵などは、切支丹の踏絵より外には見ることの無い時代、茶店の店先に、鏡に映したような、お鳥の肖像があったのですから、これに驚かなければ何うかして居ります。
「石、其処の店で訊いておくれ、これは何うした絵で御座いましょうか――って」
「気味が悪う御座いますネ、御新造様」
「それじゃ私が訊いて見よう」
「あれ、そんな積りじゃ御座いません」
お石が入って訊くまでもありませんでした。お鳥の変った顔形を見ると、茶店の婆アは心得顔に、
「御新造様、お鳥様と仰しゃいましたな。萩江様が十日も前から毎日毎日お待ち兼ねで御座います」と、奥を指さします。
「お石、ほんの暫らく此処で待っておくれ、誰か知ってる人が見えたらそっと教えてくれるように」
「宜しゅう御座いますとも、御新造様」
心得顔なお石を店に残して、お鳥は茶店の老女の案内するまま、薄暗い別間へ通りました。
「漸っとお見えになりました、旦那様」
「お、それは有難い」
婆アの声につれて、窓際から身を起したのは、二十八九の立派な武士、越後上布に、白博多の帯、一刀を提げて起つと、長押に髷の刷毛先が届きそうな堂々たる体躯で、浅黒い顔は日焦けのせいでしょう、にっこり