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らしんのにょせん

裸身の女仙

野村 胡堂

Read 裸身の女仙 (らしんのにょせん) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 14,437 characters · 29 screens

Aozora Bunko

駕籠に乗せて女を信濃路へ

「何をするのさ、いやらしい」

身を沈ませて、大の男にもんどり打たせると、

「えッ、神妙にせえ」

前から用人、六尺の手槍をピタリと付けます。

駕籠に乗せて女を信濃路へ

「お女中、何処へ行かれる」

「あッ、旦那様、大変なことになりました」

お石は往来に立ったまま、手離しで泣き出しました。呼び止めたのはこの暑いのに、深編笠で面体を隠した武士、言うまでもなくそれは、萩江鞍馬の世を忍ぶ姿でしょう。

「御新造様は、殿様のお怒りに触れて、浅ましく縛られたまま納戸に投り込まれて、窮命中で御座います」

「えッ」

「私は昨日のうちにお暇が出ましたが、朋輩衆の取なしで、一日だけ延して頂き唯今宿元へ下るところで御座います。私はどうなっても構いませんが、御新造様がお可哀そうで――」

「これこれ、往来で泣いては人立ちがする、ところであの、お鳥殿を救い出す工夫はあるまいか」

「飛んでもないこと――、御新造様は今晩、御領地の信州へ、通し駕籠で伴れて行かれ、一生其処へ押籠められるので御座います」

「えッ、それは本当か」

「嘘なら宜しゅう御座いますが、旦那様」

お石は四方構わず泣き出して了いました。音羽の森に夕づく陽が、この一克者らしい娘の襟に射して、妙に涙をそそる情景です。