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らしんのにょせん
裸身の女仙
野村 胡堂
Read 裸身の女仙 (らしんのにょせん) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 14,437 characters · 29 screens
油絵の具で描いたお鳥其儘の姿
「殿様」
「覚悟は宜いな」
郷太郎は二度太刀を振り冠りましたが、紅い唇、白い喉、碧い眼の、言いようもない魅惑的なお鳥の顔に逢うと、二度とも刀をおろして、息を継ぎました。
「殿様」
「よしッ、お前の成敗は、外に術がある。来いッ」
刀をピシリと鞘に納めると、前屈みにお鳥の脇へ両手を入れて、五尺三寸あまりの美女を、いとも軽々と抱き上げました。
不思議な弾性を包んだ、柔軟な身体が、郷太郎の腕の中にムズムズと動くと、
「不届な女だ」
お鳥の顔へ唇の雨を降らせて、郷太郎はサッと奥へ、女を抱いたまま消え込みました。
油絵の具で描いたお鳥其儘の姿
お鳥は十日待ちました。
その間、一寸も外へ出る暇が無かったのと、郷太郎の愛撫――、源吉を斬って以来、油を注いだように猛烈になった愛撫から、遁れる途も無かったのです。
それに、お鳥の様子――、赤い髪と、碧い眼が、天明年間の江戸の街には、あまりに目立って、頭巾を冠る期節でもなければ、うっかり外へも出られなかったのでした。
若し、源吉が無事に逃げ延びたら、鬼子母神の茶店で待つと言う、若い浪人者とかの話は、そんなにお鳥を煩わさなかったでしょう。