Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 157,440 characters · 313 screens
「八、黙って突っ立っていずに、少しは手伝えよ」
「ヘエ」
「こんな事をさせると、男は意気地がないな。平常は大きな面をしているが、いざ自分の手でご飯でも炊こうとすると、薪一本だって素直に言うことを聴かない」
平次はそう言って淋しく笑うのでした。
「姐さんはどうなったか、見当くらいはつきませんか」
八五郎はかまどの前にしゃがんだまま、自分の涙を薪の煙ぶるので誤魔化しているのでした。
「まるっきり見当もつかないよ。今度はおれも負星だ、あせればあせる程ヘマばかりする」
平次は苦笑いを絞り出しております。
「だれが一体姐さんをさらって行ったんでしょう」
「それはわかっているじゃないか」
「?」
「引窓から女一人を引っ抱えて逃げ出したんだ。力があって身軽で、恐ろしく胆の太い人間だ」
「お栄と言ったような」
「早まっちゃいけねエ、あの女は胆が太くて身軽だろうが、まさかお静を小脇に抱えて、引窓から屋根へ出ると言った芸当はむずかしかろうよ。現に八五郎は自分の身体一つを這い出すんでさえ、一と騒動やったじゃないか」
「すると親分、あの軽業師」
「明石の五郎八はくさいが、あれでもない。酉刻(六時)まで両国の小屋にいて、それから一と風呂浴びて一杯やっているところを、この眼で見ているんだから疑いようはないわけだ」