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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
Read 随筆 新平家 (ずいひつ しんへいけ) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 213,575 characters · 424 screens
思わずそこの門と守衛小屋を見て立ちすくむ。悟空子や社長さんはどんどん行くが、「君、君。そんな方へ行ってもいいのかい」と、ぼくらは、恐れをなしてしまう。かつての要塞地帯時代にビクビクさせられた神経が、ひどいもので、まだどこかに残っていたものとみえる。悟空子、夕闇の向うで、白い歯を見せ、手招きして笑いぬく。
山腹の岩角に立つ。枯れ尾花に、風がつよい。
ここは「鎮西要略」にある門司の古城址だろうか。とすれば平ノ知盛が拠って、九州での再起を案じた所である。どうして平家が九州経略を主目的とせずに、壇ノ浦の殲滅をみすみす求めてしまったか。疑問の余地がないでもない。松浦党は平家方であった。肥後の菊池隆直、筑前の原田種直、長門の紀光季など、有力な味方はある。殊に、清盛と太宰府との縁は一朝一夕のものではない。壮年期には、大宰大弐という官職にもついていたし、晩年には日宋貿易の上からも、彼と九州とは、唇歯の関係もただならぬものであったのに。
原田種直という当時の九州平氏の名を挙げたついでに、ここで、も少しいってみたい。じつは、この原稿を書く数日前、小倉市の一読者から、ぼくへ手紙が寄せられた。