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あるひのれんげつに
ある日の蓮月尼
岡本 かの子
Read ある日の蓮月尼 (あるひのれんげつに) by 岡本 かの子 (おかもとかのこ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 11,878 characters · 25 screens
第二景
)
無名の青年 ――いつの間に袖のしづくとなりにけむわけ来し法の道しばの露。
(青年、蓮月を顧る。蓮月、眼より涙の溢れんとするを、そのままに専心抹茶の茶椀を造っている。)
第二景
(前景と同じ住庵の場、立派な武士が供の二人と部屋の縁に腰かけて居る。これに対して蓮月は別に愛想好くも無くまた不愛想という程でもなく、極めて自然の態度で士が望むままに出来上った陶器を棚から下して見せて居る。)
蓮月 ――もう、この外に出来たものは御座いません。
主人の士 ――いやもうこれで結構じゃ。――どの品にも一風流あって面白いが、わけてこの蛙の絵を描いた松風の歌の茶道具一揃いが俗を離れて飄逸じゃ。これを貰って行くことにしよう。
蓮月 ――不細工なもので恐れ入ります。
供の士の一 ――蓮月さんの仮名書は今日世間に定評あって有名ですが、絵までいつの間にか美事にお描きになるとは随分器用な事ですな。
蓮月 ――ほほほ、絵などと仰せられては痛み入ります。ほんの模様代りのいたずら描きなのです。
供の士の二 ――いやいたずらどころでは無い。人間魂さえ磨かれて居れば何をしようとみな脱け出るというのは本当です。