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とむらいきかんしゃ
とむらい機関車
大阪 圭吉
Read とむらい機関車 (とむらいきかんしゃ) by 大阪 圭吉 (おおさかけいきち) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 186,729 characters · 371 screens
紳士は二人を見較べるようにしながら、重々しい調子で云った。
「――僕は、刑事弁護士の大月というものだが、たとえあのクーペが有名な実業家の自動車であろうと、いやしくも人間一人を轢逃げにするからは、断じて見逃さん。君達は、自分の良心に恥じるがいい」
「ちょ、ちょっと待って下さい」
あとから出て来た事務員が乗り出した。額の広い真面目そうな青年だ。
「お言葉ですが、ハッキリお答えします。――この箱根口の停車場へは、貴方がたの自動車以外に、クーペはおろか猫の仔一匹参りません!」
四
それから数分後――電話を掛ける大月氏のうわずった声が、ベルの余韻に押かぶさるようにして、停車場の中から聞えて来た。
――ああ、もしもし――十国峠の停車場ですか?……箱根口です、先刻の怪我人を乗せた自動車の者だがね、そちらへあのクーペが戻って行かなかったかね?……え?……なに、行かない……やっぱり、そうか……ううん、こちらにもいない……本当にいないんだ、全々来ないそうだ、途中で?……むろん、逢わなかったさ……うん大変だよ、よしよし、ありがとう……。
――ああ、もしもし、熱海署ですか?……当直の方ですか?……僕は大月弁護士ですが、誰れかいませんか?……夏山さん?……いいです、代って下さい……。