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とむらいきかんしゃ
とむらい機関車
大阪 圭吉
Read とむらい機関車 (とむらいきかんしゃ) by 大阪 圭吉 (おおさかけいきち) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 186,729 characters · 371 screens
青山さんは姿を見せない。時間は追々迫ります。有罪か? 無罪か? どのみち今日は判決が下されます。このままで行けば、とても有罪は免れまい――菱沼さんは気が気ではありません。しかし時間のほうは待ってくれません。やがてまず、傍聴人達がドヤドヤと入廷します。続いて書記さんが、書類を持って登壇する。その後から検事さん、裁判長。一方前の平場へは、被告人、菱沼さん、と云った風に、ま、昨日の公判廷と同じような顔触れが揃ったんです……もっとも菱沼さんはひどくそわそわして辺りを見廻してばかりいましたがね……
ところが、そうして皆んなの顔触れが揃うと、まるで皆んなが入廷してしまうのを待ってでもいたように……どうです、ひょっこり青山さんが、入口に現れたんです。そして、少なからず周章ててしまった菱沼さんには、物も云わず、壇上の裁判長に、ちょっと、こう眼で会釈したんです。するともう、予て打合せてでもしてあったと見えて、裁判長が、黙って頷いたんです……いや、驚きましたよ……ところがどうです。すると青山さんは、戸外の後ろを振返って、チラッと誰かに眼配したんですが、その合図を待ってたように、多勢の警官達がドヤドヤッと法廷へ雪崩れ込んで来たんですよ……驚きましたね……