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とむらいきかんしゃ
とむらい機関車
大阪 圭吉
Read とむらい機関車 (とむらいきかんしゃ) by 大阪 圭吉 (おおさかけいきち) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 186,729 characters · 371 screens
年嵩の男と女が飛び出した。それは直ぐ隣りの採炭場にいる峯吉の両親であった。父親は技師に思いきり一つ張り飛ばされると、そのまま黙ってその場へ坐ってしまった。母親は急に気が変になってゲラゲラと笑いはじめた。レールの上へ叩きつけられて喪心してしまったお品を、進み出て抱え上げた坑夫があった。父母の亡くなったお品にとって、たった一人の肉親である兄の岩太郎であった。
女を抱きあげながら岩太郎は、憎しみをこめた視線を技師達のほうへ投掛けると、やがて騒ぎ廻る人びとの中へ迎え込まれて行った。
監督が竹簀へ粘土を入れて持って来た。続いて二人の坑夫が同じように重い竹簀を抱えて来た。工手がすぐにコテを取って鉄扉の隙間を塗込めはじめた。
ほかの持場の小頭達が、急を知った坑内係長と一緒にその場へ駈けつけて来ると、技師と監督は、工手の塗込作業を指揮しながら騒ぎ立てる人びとを追い散らした。
「採炭場へ帰れ! 採炭を始めるんだ!」
呶鳴られた人びとは、運びかけの炭車を押したり、鶴嘴を持直したり、不承不承引上げて行った。興奮が追い散らされて行くにつれて、鉄扉の前に居残った人々の顔には、やがてホッとした安堵の色が浮び上った。