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とむらいきかんしゃ
とむらい機関車
大阪 圭吉
Read とむらい機関車 (とむらいきかんしゃ) by 大阪 圭吉 (おおさかけいきち) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 186,729 characters · 371 screens
「なに、十時半より前に出て行った?」
「ハイ、それはもう確かで、そんな時分に坑夫で坑外に出たのは、この二人だけでござんすから、よく覚えとります」
「そうか。では、それから今しがたここへ連れ込まれるまでに、一度も坑内へ降りはしなかったな?」
「ハイ、それは間違いございません。ほかの番人も、よく知っとります」
「そうか。よし」
番人が帰って行くと、係長は巡査と顔を見合せた。
十時半前と云えば、発火坑の塗り込めの完了したのが恰度十時半であり、その時にはまだ丸山技師はピチピチしていたのであるから、十時半前に出坑した岩太郎とお品がどうして技師を殺害することが出来よう。これで四人の嫌疑者のうち二人までが同時に嫌疑の圏内から抜け出てしまった。残りは二人だ。
係長は、ひとまず岩太郎とお品を控室にとどめて置いて、次に峯吉の父親を呼び込んだ。
「お前は、あの時、左片盤の小頭に連れられて、何処かへ行ってしまったな。いったい何処へ行っていた?」
すると死んだ魚のような目をした老坑夫は、声を出すたびに腹の皮へ大きな横皺を寄せながら、
「それは、小頭さんに、訊いて下さい」
と云った。
左片盤の小頭は、食堂で昼飯を食べていたが、係長の命令で直ぐに呼び出された。