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とむらいきかんしゃ
とむらい機関車
大阪 圭吉
Read とむらい機関車 (とむらいきかんしゃ) by 大阪 圭吉 (おおさかけいきち) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 186,729 characters · 371 screens
「……どうも僕は、いままで大変な感違いをしていたらしい」
「と云うと?」
「いや……後で話そう。とにかく、もう此処はこれで沢山だ。引き揚げよう」とそれからマベ貝の詰った桁網の上へ屈みながら、
「済まないが、君も手伝ってくれ給え。こいつは大事な証拠品だから」
私はなんのことだか判らぬながらも、取敢ず彼の申出に従った。やがてひどく重いその荷物を二人してやっとこ提げながら先程の小池の岸へ出て来た私達は、其処でアセチリン・ランプをも荷物の中へ加えて、間もなく元の海岸へ出た。
重い荷物を白鮫号に積み込んだ私達は、この吹き溜りには風がないので、岸伝いに白鮫号の艫綱を引っ張って、風のある入江の口までやって来た。
「此処で昨晩の加害者も、帆や舵の位置を固定して、白鮫号を放流したのだよ。見給え。ほら、やっぱり擦り消された足跡が、ずっと続いて着いている」
東屋氏にそう云われて、始めて私はそれに気がついた。こちらの足跡は最初上陸した附近の足跡よりも先に消したと見えて、消し方がずっと丁寧である。
「さあ。僕等もこの辺で出帆しよう。大分風も強くなって来た」
私達は船に乗り込んだ。大きな大檣帆は暫く音を立ててはためいていたが、やがてその位置を風向きに調節されると、白鮫号は静かに走り出した。