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アンドロギュノスのちすじ
アンドロギュノスの裔
渡辺 温
Read アンドロギュノスの裔 (アンドロギュノスのちすじ) by 渡辺 温 (わたなべおん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 129,168 characters · 267 screens
併し、これは鴇母さんにも、他の女達にもまたサーシャにも、少からず意外であるらしかった。が、私は彼女を膝の上に腰かけさせて、その艶のない頬を撫でてやった。
私共は二人分として二十五円払った。勘定が済むと、それぞれの寝室へ入った。私の女は、私の衣服をたたんで、鏡台のついた箪笥へしまってくれた。『あなた、偉い方?』と女は私の髪を骨ばった指で弄びながら訊いた。女の声は喉もとで嗄がれて、長い溜息のような音を立てた。
『ああ、華族様さ。けれども男爵だよ。』と、私は嘘を吐くのであった。
『そう、いいわねえ。』彼女の声は風のように鳴った。
『君、病気なんだね。肺病だろう?』
『ごめんなさいね――あたし、死ぬかもわからないの。』
『いいよ、いいよ。君が死ねば、僕だって死ぬよ。』
『まあ――調子がいいわね。』私は彼女の、小さな頭を胸の中に抱いた。
『お止しなさいな。あたし、もっと悪い病気なのよ。』と、彼女は唇をそらそうと※(「足へん+宛」、第3水準1-92-36)いた。
『いいよ、いいよ。』私は、そして、無理遣りに彼女の頬を両腕の中におさえた。――そんな病気は、世界中の何万何億と云う男と女とを、久しい時代に渡って一人一人つないで来た――云いかえれば、男女の間の愛と同じ性質のものである――と云った、アレキサンダー君の言葉を思い出しながら…