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アンドロギュノスのちすじ
アンドロギュノスの裔
渡辺 温
Read アンドロギュノスの裔 (アンドロギュノスのちすじ) by 渡辺 温 (わたなべおん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 129,168 characters · 267 screens
ところが、門口のところで街から帰って来た小野とばったり出会いました。小野はひどく自暴酒でも仰ったと見えて強か酔っぱらっていましたが、私の顔を見るといきなり私の胸に取り縋って泣き出したのです『――勘弁しておくれよ、勘弁しておくれよ――長い間俺の面倒を見てくれた君だもの、俺の気質ならよく心得ている筈じゃないか。……俺みたいなだらしのない意気地なしを、君は二人と知っちゃいまい……美代子さんだって、君があんまり素気なくしてちっとも一緒にいて可愛がってやらないから、それに今迄不仕合せに暮していたもんだから、つい頼りなくなっちまったんだ。……怒らないでくれ。……君から憎まれたら僕は本当に立つ瀬がないんだ……と彼は私をかき口説くのでした。私は腹立しさのあまり、彼の腕をふりもぎりながら、力まかせに顎のあたりを殴りつけました。すると彼ははずみを喰って蹌踉くとたあいもなく尻もちをつきましたが、その時私のインヴァネスの羽を掴んで破ってしまったのです。――併し、リボンの方は何時の間に失ったのやら少しも気がつきませんでした。美代子と揉み合ったために落としたものか、或はその折解けかかっていたのが小野に絡みつかれている間に、あんな薄いヘラヘラしたものですからうまい工合に彼の外套のふところか何かへ紛れ込んだものか、どっちともはっきりし