Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
アンドロギュノスのちすじ
アンドロギュノスの裔
渡辺 温
Read アンドロギュノスの裔 (アンドロギュノスのちすじ) by 渡辺 温 (わたなべおん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 129,168 characters · 267 screens
水族館にも、文太郎組の姿は見かけられませんでした。
亀の子、泳いでいる大章魚、あなご、ごんずい……大して面白い見せ物ではありません。併し、あの物凄い『猫鮫』だけは当館第一の怪物です。雄吉君は、長いことその前に立ち止っていました。『猫鮫』みたいな醜怪なる化物を、この世で初めて、エミ子もお雄坊も見せつけられたのです。
あれを眺めた者は、誰だって覚えずにはいられない本能的憎悪を、雄吉君は人一倍にしつこく、強く感じたらしかったのです。
『畜生、一つブン殴ってやり度いな。ステッキを持って来なかったのが何より手ぬかりだった。』と、彼はいたく口惜しがりました。
『ほんとに憎らしいこと。家のブン大将が怒った時とそっくり……』
『てへッ。何とか仰有られたようですな。』
雄吉君は、到頭我慢がなり兼ねたと見えて、足もとに転がっていた砂利の一番大きそうなのを拾うと、いきなり猫ザメめがけて投げつけました。けれども怪物はビクともしないで、却って、ニヤリと笑ったとも思えるような工合に白い鋭い歯をのぞかせて、あぶくを二つ三つ噴き出してみせた位です。
『お止しなさい。雄ちゃん、見つかると叱られてよ。