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チベットりょこうき
チベット旅行記
河口 慧海
Read チベット旅行記 (チベットりょこうき) by 河口 慧海 (かわぐちえかい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 531,520 characters · 1042 screens
第百四十二回 救解の方策
空を飛んで来たか
チベットでは皆チーキャブが法王に上書した事を本当にして居る」というような話。「それじゃあ私が空を飛んで来たかどうか、よく分る事があるから一遍私の居る所へ来て見るがよい。」「それは何ですか。」「あのチーキャブの命令で貰って来るところの帰国通行券があるのだ。かの通行券を私と下僕と二人分だけ貰って来てあるからそれを見れば分る。」「そんな事がありますか。そりゃ嘘でしょう。」「そんな嘘を吐いても仕方がない。冗談は止して来て見るがよい」というような話。
既にその時分にはダージリンでも「あの人はあんな事をいって居るけれどもなあに本当の道を通って来たんじゃない。どうしてあれだけの荷物を持出せるものか。我々が少しの荷物を持出すさえ非常な難儀をした位。しかるにあれだけの荷物をやすやすと持出し自分の身体もやすやすと出て来るというのは魔術を使って出て来たに違いない」という評判が立って居ったそうです。チベット人がそんな事をいって居るというのはチーキャブがおのれの罪を免れるために馬鹿な事を上書したからです。
その後その男が来ましたからラサ府に帰る通行券を示したところが、其書は真実と信じましたけれどもまた一つの疑いを起し、多分チーキャブの眼を眩まして取って来たろうと考えて居たらしい。