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うえすぎけんしん

上杉謙信

吉川 英治

Read 上杉謙信 (うえすぎけんしん) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 129,102 characters · 256 screens

Aozora Bunko

家康がいうには、

「あの折の一戦は、甲越ともに、興亡浮沈のわかれともなるところだから、軽々しくうごかず、大事を取ったことは、双方とも当然といえるが、それにしても、信玄はちと大事を取り過ぎている。謙信が妻女山の危地に拠って、わざと捨身の陣容をとったことに対し、信玄は自分の智恵に智恵負けの形が見えた。また、九月九日の夜半から暁にかけて、謙信が妻女山を降りて川を渉る半途を討つの計を立てていたら、おそらく越軍の主力は千曲川に潰滅を遂げたにちがいない。それを八幡原に押出して、相手の軍が、平野を踏んでから後を撃つ構えに出たのは、信玄に似あわしからぬ落度である。要するに信玄は、謙信の軍を観て、首将謙信の心事を観ぬくことが少し足らなかった」

なお、兵学家の一家言なども、いろいろあるが、総じて、三楽と家康の批評にほぼ尽されている。

ただ、なおここで、現代から観ていいうることは、信玄はあくまで物理的な重厚さと老練な常識を以て臨み、謙信はどこまでも、敵の常識の上に出て、学理や常識では想到し得ない高度な精神をふるい起して、この戦いをこれほどにまで善く戦ったということである。