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うえすぎけんしん

上杉謙信

吉川 英治

Read 上杉謙信 (うえすぎけんしん) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 129,102 characters · 256 screens

Aozora Bunko

且つは五臓の患ひとなる。

一 大食は、卑劣の至りなり。小我の快楽に過ぎず。家来朋友と程々に楽しむを以つて最なるものとし、独味飽慾はいやしむべし。

一 総じて、飲食の事、能々つゝしむべき也。もし病まば一朝の戦陣に恥あり。もし命を落さば、忠孝二道にそむく。世々までのものわらひ、家門の名折れ、合戦の場において功なきにも劣る。

これは藩士一般への上杉家家訓の一節にすぎないが、謙信はなお、帷幕の上将の名を連らねて、

不識庵家中日用修身巻

という一種の「武士道訓」を藩の子弟たちへ示していた。

一生の務、今日の事

という初めには、

一 暁起、手水仕るべきこと。

神祖、仏拝の礼、勿論のこと。

一 やしき一巡見廻り、男は、髪を早く結ぶが第一也。食事調菜、二種を過ぐべからず。

一 厩は毎日、用なくとも、見まはり欠かざること。

一 わが家にあるは、みなわが子と思へ。慈悲、仁心、刀に打粉いたすが如くせよ。

一 夜は、わが愛子たりとも、わが側に寝かすな。床衾奉公人はあたゝかに、わが子は寒きにおけ。

――というような日常衣食住の細目から公職、交友、音信、遊楽のことまでわたっているが、とりわけ武士としての修身修養には、謙信の方針としてこう訓えている。